皆様、ご自身あるいはご自身の動物は献血していますか?今回の論文は動物用血液バンクや献血に対する飼育者の意識調査に関するものです。この論文はイギリスのグループから出されたものですが、イギリスでは2005年に法律が変わって動物用血液バンクが設立されたようです。その後、増え続ける需要に対して供給が追い付かないようで、飼育者の傾向を探るために本研究を実施したとあります。日本では今のところ動物用血液バンクの整備は法的に厳しいものがありますが、本研究の結果は各動物病院での院外ドナーのリクルートを考える上で非常に参考になると思います。是非ご一読下さい。
(担当:瀬川、丸山)
動物用血液バンクに対する飼育者の理解と献血に対するモチベーション
著者:Wilder A, Humm K.
掲載誌:Vet Rec. 2019 Jun 27. pii: vetrec-2018-105139. PMID:31249068
背景:犬や猫の献血に対する世間の認知度や関心は低く、現状では理解されていないことが多い。したがって、動物の献血に対する飼育者の理解を深めることは、献血に誘致する上で効果的と言えるかもしれない。そこで本研究では、小動物の献血ならびに自身の飼育している動物がドナーになることに関して、飼育者の意識調査を行った。
方法:一次診療機関を受診した158名の飼育者に対してアンケート調査を実施した。
結果:70%の飼育者は、犬や猫が献血できるということを認識していなかった。一方、もし自身の動物が献血規定をクリアしているなら、89%の飼育者が献血をしてみたいと回答した。特に、飼育者がフルタイムで働いていない場合、年齢が70歳以下である場合、献血に対して前向きな姿勢を示していた。
アンケートの自由回答部分に関する主題分析(質的データを分析する手法)では、飼育者の献血に対するモチベーションと懸念に関する回答は以下の4グループに分類された。すなわち、他の動物を救いたいから献血に参加したいという利他的精神に関するものが49%、献血の必要性の認識に関するものが18%、いつかは自身の動物が輸血のお世話になるかもしれないから献血に参加したいという互恵精神に関するものが19%、猫にとって献血はストレスなのではないか、献血しようとしても時間や交通手段がない、献血手技に不明瞭な点がある、など懸念事項に関するものが12%であった。
※abstractの内容に一部わかりづらい点が含まれていた為、本文より抜粋して加筆させて頂きました。
とても重要な数字と考えます。特に最後の一文「猫にとって献血はストレスなのではないか、献血しようとしても時間や交通手段がない、献血手技に不明瞭な点がある、など懸念事項に関するものが12%であった。」については今後一般臨床家がネコの来院件数を増やすために知っておくべき事実である。この12%のオーナーが安心して病院に来院出来る知識と技術をより広く情報拡散をする必要があろう。近年アメリカのみならずグローバルに普及しつつあるFear Free に診療を行うという概念が日本でも普及してほしい。