前回に引き続き今回もネコの新しい血液型(FEA)に関する論文のご紹介です。前回は1~5まで存在しているFEAの中でFEA1に注目した論文でしたが、今回はFEA4に注目した論文です。
この論文はFEA4に対する抗体産生や免疫グロブリンのタイプを調査する目的で行われましたが、調査の結果、なんと複数回の輸血を行なってもFEA4に対する抗体が検出されず、免疫反応は起きなかったという結果となりました。それどころか、FEA4とは関係ない免疫反応が起こり、偶発的にFEA6という新しい抗原が発見されることになりました。FEA6についてはまだほとんどわかっていないですが、抗FEA6抗体はIgMであり、これは抗FEA1抗体やB型猫が保有している抗A抗体と似たもののため、輸血後に溶血する可能性があることから今後の重要な研究課題であると著者は締めくくっています。
血液型はヒトも含め、今もなお研究が進められており、どんどん新しい血液型が発見されていきます。我々も常に最新の情報を皆様にお届け出来るよう尽力してまいります。
(担当: 中村)
FEA6の同定とFEA4に対する同種免疫の欠如
著者: Thomas Ternisien, Florian Azoulay, Mohammad Y Bangash, Marie-Claude Blais.
掲載誌: J Vet Intern Med. 2024;38:3063–3069. PMID: 39361954
背景: 新しいネコ赤血球抗原 (FEA) は、自然抗体の存在に基づき最新の研究で発見されたものだが、臨床的重要性はほとんどわかっていない。
仮説/目的: FEA4陰性猫にFEA4陽性血液を輸血した際の免疫原性について明らかにし、抗体産生率、抗体価、免疫グロブリンのタイプなど、産生された抗FEA4抗体について調査することを目的とした。
動物: 19匹の健康なA型猫のFEAを1~5まで判定し、FEA4陽性の猫とFEA4陰性の猫をそれぞれ特定した。
方法: FEA4陰性の猫4頭にFEA4陽性血を輸血した。ゲルカラム法を使用して、輸血後最初の1週間は毎日、その後1か月間は1週間に1回、それ以降は1ヶ月に1回の頻度で抗FEA4抗体を調べた。
結果: 輸血されたFEA4陰性の猫3頭では、繰り返しの輸血にもかかわらず、抗FEA4抗体は検出されなかった。別のFEA4陰性の猫では、輸血後21日目にドナー赤血球に対する抗体が検出された。しかし、これはFEA4に対するものではなく、FEA1~5には該当しない新しいFEAに対する抗体だった。抗FEA6抗体と名付けたこの抗体は輸血後4か月以上検出可能であり、スルフヒドリル処理により免疫グロブリンのタイプは主にIgMであると判定された。
結論と臨床的重要性: 4頭のFEA4陰性猫に陽性血を輸血しても抗FEA4抗体が検出されなかったため、FEA4は免疫原性がないと考えられる。一方、FEA6という新しい抗原が発見されたが、その臨床的意義についてはさらなる研究が必要である。