top of page
jsvtm2018

犬の急性輸血反応と前投薬

更新日:2023年8月17日

貴院では輸血の前に何かしらの前投薬を行っていますか?個人的には、保存していた赤血球濃厚液を投与する際のみプレドニゾロンを前投薬するようにしていますが、研究会の間でもコンセンサスの取れていないところでもあります。今回は、そんな輸血前投与薬の有効性について検討した論文のabstractを紹介したいと思います。

(担当:中村、瀬川)


犬の急性輸血反応の発生に対する前投薬とその他の要因の影響


著者: Bruce JA , Kriese-Anderson L , Bruce AM , Pittman JR

掲載誌: J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2015 Sep-Oct;25(5):620-30. PMID:26109490

目的: 犬の輸血後24時間以内の輸血反応に対する前投薬の効果を評価すること

研究デザイン: 2008年から2011年の回顧的研究

場所: 二次診療施設

対象: 犬558頭における935回の輸血

方法: 輸血をおこなった犬のカルテを調査した。調査対象は、症例情報、体重、血液製剤の種類、輸血の理由、初回または複数回輸血、急性輸血反応の有無、輸血反応の種類、輸血反応に対する治療の有無、輸血前投薬、その他の薬剤投与、免疫介在性疾患の有無、および周術期の輸血であるかとした。

結果: 136頭の犬に合計144回(15%)の急性輸血反応が認められた。最も多い反応は発熱(77/144回[53%])と嘔吐(26/144回[18%])であった。6頭の犬が輸血反応(4%)により死亡した。輸血反応は、年齢(P = 0.257)、性別(P = 0.754)、体重(P = 0.829)、前投薬(P = 0.312)と関連していなかった。血液製剤の種類は輸血反応と有意に関連しており(P <0.001)、濃厚赤血球製剤は輸血反応の発生リスクが高く、血漿製剤は発生リスクが低かった。免疫疾患に罹患していることは輸血反応の発生と有意に関連していた(P = 0.015)。周術期に輸血した場合の輸血反応発生頻度は有意に少なかった(P = 0.023)。

結論: ほとんどの輸血反応は軽度だが、溶血、呼吸困難、6頭の死亡を含む深刻な反応も認められた。 免疫介在性疾患は輸血反応の発生と関連していたが、周術期の輸血は輸血反応発生頻度が低かった。濃厚赤血球輸血は急性輸血反応の発症と関連していた。輸血前投薬全体で見た場合、投与によって輸血反応の発生は有意に変化しなかったが、抗ヒスタミン薬を単独で評価した場合、急性アレルギー反応の発生率を減少させた。

閲覧数:533回0件のコメント

最新記事

すべて表示

献血ドナー猫の合併症に関する大規模研究

猫からの献血を考える際は多くの場合に鎮静処置が必要となるものの、無鎮静の場合でも合併症に困ることは多くなかったとする報告を 以前紹介 させて頂きました。その報告は32頭の猫から115件の献血採血を対象としたものでしたが、今回紹介させて頂く研究はわずか5年のうちに7,812頭...

犬の急性輸血反応発生率とリスク因子

以前、 犬の急性輸血反応と前投薬に関する文献 を紹介させて頂きましたが、その文献では様々な血液製剤を投与した935件のうち144件(15%)において急性輸血反応がみられ、高頻度で遭遇するものは発熱が77件(8%)、嘔吐が26件(3%)でした。...

ドナー猫とヘモプラズマ感染症

以前、 イタリアにおけるドナー犬の節足動物媒介性病原体の保有率に関する記事 を掲載しましたが、今回はポルトガル、スペイン、ベルギーの動物血液バンクのドナー猫におけるヘモプラズマ感染症の調査に関する報告です。 その動物血液バンクでは、献血された検体の全てがFIV抗体、FeLV...

Comments


bottom of page