当サイトで最近報告の多いDalですが、その危険性があることは認識されつつも検査キットが日本国内にはないので調べることができません。今回紹介するものは北米の報告ですが、DEA1の凝集カードと同じようにDalポリクローナル抗体をカードに塗布してケージサイドの検査キットを作製し、その有用性を検討したとの論文です。
ゴールドスタンダードであるゲルカラムと比較したところ、健康な動物では感度・特異度ともに95%以上と有効であったそうですが、貧血症例では感度が65%まで落ちてしまい、解釈の信頼性が保たれるPCVの最低値は20%であったとのことです。DEA1カードはPCVが低くても凝集に影響を与えないとされていますが、これは使用している抗体が異なる(モノクローナル抗体orポリクローナル抗体)だからなのかもしれません。
近い将来にはDEA1と同程度の信頼性をもつDal用カード型キットが使用できるようになるかもしれませんね。
(担当: 山﨑)
Dal抗原用凝集カードの信頼性
著者: Emilie Véran, Marie-Claude Blais.
掲載誌: J Vet Intern Med. 2023 Mar;37(2):503-509. PMID: 36862049
背景: 98%の犬はDal陽性であるが、ドーベルマン(42.4%)やダルメシアン(11.7%)など一部の犬種ではDal陰性の犬が多い。ところが、Dal血液型検査は一般的に使用されていないため、これらの犬種の適合血液を見つけることは困難である。
目的: ケージサイドで使用するDal型血液型判定用凝集カードを検証すること。また、その際の判定が信頼できる最低のPCV閾値を決定すること。
動物: ドナー犬38頭、ドーベルマン52頭、ダルメシアン23頭、貧血症例37頭の全150頭。
方法: Dal血液型判定は、EDTAで48時間以内保存の血液サンプルを使用した。ケージサイド凝集カード法とゴールドスタンダードのゲルカラム法を用いて行われた。PCVの閾値決定には、血漿希釈した血液サンプルを用いた。すべての結果は、観察者2人で盲検化した状態で行った。
結果: 観察者間の一致率は、カード法では98%、ゲルカラム法では100%であった。全体として、カード法の感度と特異度は、86%-87.6%、96.6%-100%であった。誤検出は18検体であり(うち15検体は両観察者により誤検出)、偽陽性1例(ドーベルマン)、偽陰性17例(貧血症例13例)が含まれた。この貧血症例のPCV範囲は5%~24%、中央値は13%であった。信頼性の高い解釈を可能にするPCVの閾値は20%以上と決定された。
結論と臨床的重要性: Dal凝集カードはケージサイド検査として信頼できるが、重度の貧血患者では結果を慎重に解釈する必要がある。
図1. ゲルカラム法と凝集カード法によるDal血液型検査。ゲルカラム法では1+~4+をDal抗原陽性と判定し、その多くは3+~4+の強い凝集を呈していた。一方の凝集カード法では、2+~4+をDal抗原陽性と判定し、1+のような弱い反応の場合は判定不能(not interpretable: NI)とした。
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