top of page
jsvtm2018

白血球除去フィルターの実用性

更新日:2023年8月17日

白血球除去フィルターはご存知でしょうか?医学においては、白血球に起因する輸血後の発熱反応や感染症等の副作用を減少させることを目的として、血液製剤の保存の前に白血球を除去しています。

たとえば旭化成メディカルのセパセルRZフィルターでは、製剤中の白血球を99.998%除去することにより、保存中に白血球が放出する生理活性物質などの削減に成功しております。しかしながら、同時に血小板は99.9%以上除去されており、赤血球も7.0% (回収率93.0%)除去されてしまうようです。451.5mLの全血の濾過時間は15.7分、濾過後は421.3mLとあります。

これまで、犬においても白血球除去による副作用発生率を研究した論文は何報もありますが、白血球除去の実用性、製剤のロス、作業時間に着目していた論文はみられませんでした。今回紹介する論文はその点を調べたものとなりますので、ぜひ原文を含めてご覧頂ければと思います。

(担当: 瀬川)


白血球除去が犬の輸血用血液製剤の重量と作業時間に及ぼす影響


著者: Richard D Trinder, Eva Lo, Karen R Humm.


掲載誌: J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 Jun 17. doi:10.1111/vec.13225. PMID: 35712893.


目的: 白血球除去を強く支持する科学的根拠が犬において確立しきれていないにもかかわらず、白血球が引き起こす輸血反応のリスクを軽減する目的で、医学にならって犬でも白血球除去が日常的に行われている。しかしながら、白血球除去が動物用血液バンクのコストに及ぼす影響や、フィルターを通すことによって生じる血液製剤のロスについてはあまり検討されていない。そこで、全血を白血球除去して赤血球製剤および血漿製剤を作製する際の、作業効率や製剤喪失量を調査することを本研究の目的とした。


方法および結果: 犬の全血68検体を用意し、白血球除去を行う群34検体、白血球除去を行わない群34検体に割り当てた。結果、両群間の赤血球製剤や血漿製剤の重量、作業時間に有意な差はみられなかった。しかしながら、白血球除去を行った群の赤血球製剤はフィルター前後で明らかに重量が軽くなっており(P<0.01)、白血球だけでなく赤血球もある程度喪失していることが明らかとなった。


結論: 白血球除去による作業時間の大幅な延長や赤血球製剤、血漿製剤の深刻な喪失はみられなかった。ただし、白血球除去フィルターに血漿がトラップされることはほとんどないものの、赤血球製剤の一部はトラップされて製剤喪失につながっていた。


Fig 1. 4連バッグのイメージ図。1は採血バッグ、2は白血球除去 (LR)フィルターを通した後のバッグを示す。白血球除去を行わない群の場合、点線部分で無菌的にラインを切断、接合している。バッグ2を遠心し、その上清である血漿をバッグ3へ移し、残った赤血球沈査にバッグ4の中の赤血球保存液を添加して濃厚赤血球液として保存する。

閲覧数:374回0件のコメント

最新記事

すべて表示

献血ドナー猫の合併症に関する大規模研究

猫からの献血を考える際は多くの場合に鎮静処置が必要となるものの、無鎮静の場合でも合併症に困ることは多くなかったとする報告を 以前紹介 させて頂きました。その報告は32頭の猫から115件の献血採血を対象としたものでしたが、今回紹介させて頂く研究はわずか5年のうちに7,812頭...

犬の急性輸血反応発生率とリスク因子

以前、 犬の急性輸血反応と前投薬に関する文献 を紹介させて頂きましたが、その文献では様々な血液製剤を投与した935件のうち144件(15%)において急性輸血反応がみられ、高頻度で遭遇するものは発熱が77件(8%)、嘔吐が26件(3%)でした。...

ドナー猫とヘモプラズマ感染症

以前、 イタリアにおけるドナー犬の節足動物媒介性病原体の保有率に関する記事 を掲載しましたが、今回はポルトガル、スペイン、ベルギーの動物血液バンクのドナー猫におけるヘモプラズマ感染症の調査に関する報告です。 その動物血液バンクでは、献血された検体の全てがFIV抗体、FeLV...

Comments


bottom of page