もし血漿を凍結保存しようとした場合、皆様は輸血採血後、何時間以内に血漿分離されていますか?昼休みに輸血採血を行う動物病院が多いと思いますが、採血を行う時間は確保できても、分離の時間まで確保できない場合もしばしばあると思います。その間、凝固因子がどれほど失活していくのか、今回の論文はその実務上の問題点に着目した内容になっています。採血後、本論文のように常温保管しておく場面は少ないと思われますが、すぐに血漿分離することができない場合、当日は全血を冷蔵保管しておき翌日に分離する運用でも問題はないのかもしれません。是非ご一読下さい。(担当: 瀬川、丸山)
犬の全血製剤を室温で保管していた場合の凝固因子の安定性
著者: Walton JE, Hale AS, Brooks MB, Boag AK, Barnett W, Dean R.
掲載誌: J Vet Intern Med. 2014 Mar-Apr;28(2):571-5. PMID: 24467263
背景: 犬の新鮮凍結血漿を作製する際、採血後8時間以内の血漿分離が推奨されている。しかしながら、ドナーに輸血採血を依頼する際、この原則が足かせとなって採血を取りやめざるを得ないことがあるのも事実である。
目的: 犬の全血製剤を室温で8、12、24時間保管していた場合の凝固因子活性と止血蛋白質の安定性を確認すること。また、グレーハウンド系の犬とその他の犬種で凝固因子の比較を行うこと。
動物: 特筆すべき点は無し
方法: in vitroで研究を行った。犬の全血製剤を室温で8、12、24時間保管し、その後に血漿を分離した。
結果: 保管の時間の長さによらず、いずれの血漿も充分な凝固因子活性と止血蛋白質を保持していた。24時間保管してから分離した血漿の方が、8時間保管してから分離した血漿より凝固第VIIIおよび第X因子活性が有意に高かった(VIII: P=0.014、X: P=0.03)。グレーハウンド系の犬はその他の犬種と比較して、凝固第X因子(P<0.01) 、フィブリノゲン濃度(P<0.01)、フォンウィルブランド因子量(P=0.04)が有意に低かった。
結論および臨床的重要性: 全血製剤を24時間保管してから血漿分離することに問題はみられなかった。グレーハウンド系の犬はその他の犬種と比較していくつかの凝固因子活性と止血蛋白質が低い傾向にあったが、ドナーとして除外する程の低値ではなかった。
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